Agility Design株式会社

事例紹介

株式会社UPDATER(旧:みんな電力株式会社)様
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メンバーズエッジカンパニー様

Agility Designのアジャイルコーチサービスのお客様事例紹介、初回は株式会社UPDATER(旧:みんな電力株式会社)の高橋さんと伊藤さん、開発を支援されたメンバーズエッジの庄田さん、Agility Designの中野、天野(聞き手)で対談をしました。

UPDATERさんは2011年に再生可能エネルギー事業会社として設立され、発電者と生活者をつなぐ、再生可能電力小売りサービス「顔の見える電力™️」を中核サービスとしています。

創業から10年を経て、「顔の見える電力」で生み出した様々な繋がりを、テクノロジーを活用することで、衣食住をはじめとした「顔の見えるライフスタイル」全般に広げ、貧困や気候崩壊などの社会問題を解決し、世界をアップデートすることを目指して、事業を営んでおられます。

会社紹介と自己紹介をお願いします。
高橋
弊社UPDATER(旧みんな電力)は、再生可能エネルギーを中心に小売をしている新電力の企業です。今は電力だけではなく、新規事業にも力を入れており、電力が縁で結ばれた企業や個人の方により良いライフスタイルを提供できるプラットフォームになるべく頑張っています。私はバックオフィス業務を取りまとめたオールバックスという部署のマネージャーをしております。バックオフィス業務は、お客様がご契約された後、お客様の情報登録、電力の場合は切り替え(スイッチング)、料金計算、請求書発行、お客様にお届けするところまでの一連の業務を担っています。今回はプロダクトオーナー(以下PO)の役割を担いました。
庄田
弊社メンバーズエッジは自社でチームを組んで、お客様のプロダクトを一緒に作るサービスを提供しています。今回はスクラムマスター(以下SM)のポジションで、お客様と自分のチームとを合わせてアジャイルやスクラムをリードしていく役割を担いました。
今回Agility Designにアジャイルコーチサービスの支援を依頼した経緯をお聞かせください。
高橋
今まで弊社が構築してきたシステムはウォーターフォール型で開発しておりましたが、出来たものが本当に使えるものかを根本から考えたときに、アジャイル開発でやった方がきちんとみんなが使えるものができるのではないかというところが起点になっています。特にこのCISというシステムは、電力小売における顧客管理から料金計算までを担うため、バックオフィス業務を担う方がユーザーに多く、POにバックオフィスのメンバーを入れて開発するとユーザー目線の良いシステムができて、そして他社新電力でバックオフィス業務をされる方にも提供できるのではないかということで、アジャイル開発を取り入れることになりました。
伊藤
システムチームの方で、アジャイル開発で支援してくれる会社を探し、何社か話を聞きました。他社は開発チームが海外にいて、開発チームとの間に入ってくれる人としか関われない形だったので、一緒にチームで開発をやってもらえるメンバーズエッジさんが良いという結論になりました。
庄田
今回、プロダクトが二つあって両方ともスクラムをやろうという話になっていたので、手が回りきらないと思い、以前からお付き合いがあった中野さんにお願いしたという経緯です。自分自身も本格的にスクラムをやるにあたって、ちゃんとしたコーチの意見を聞きながらやりたいという思いもありました。
中野
私は社外アジャイルコーチとして、以前からメンバーズエッジさんを支援している関係から、今回はこのプロダクト開発のためにアジャイルのサポート依頼があり、入らせてもらうことになりました。
Agility Design内でアジャイルコーチの人選をした背景をお聞かせください。
中野
天野さんにお願いした決め手は、一つは、サイボウズのkintoneをベースにした既存システムをリニューアルするため、kintoneに詳しいこと(補足:天野はサイボウズのアジャイルコーチでもあります)、もう一つはプロダクト開発の経験値と現場の経験値が一番高いことから、今回は天野さんが適任だと思ってお願いしました。
アジャイル開発で一番苦労したところや、どう解決したのか教えてください。
庄田
チームが開発を予定していた物を全く作りきれず、どうやったらうまく作れるのだろうと迷っていたときが一番大変でした。チームの開発が今ないものを新しく作る0/1フェーズだったので、どういうものを作るかという意識を皆が同じにして進めれば、ある程度の速度が出てくるという見込みが自分自身にはありました。なので、まずは1本ちゃんと動くものを作ろうよというところを意識的にコミュニケーションしながらやってもらうように進めていました。その後、別のチームがやっていた開発が一通り終わって、今のチームに合流したことで、プロダクトを作るために必要なスキルがしっかりと揃ったように感じました。誰がリードするのか、誰が何をやるのかという、チームのフォーメーションがしっかりできたところが一番大きかったと思います。
高橋
軌道に乗った現在のベロシティは、スクラム開始直後のベロシティ低迷期と比較して3~5倍になりました。今週は17ポイント完了しましたが、あのつらかった時期は3ポイント完了できたらよい方でした。加えて、私はプロダクトゴールを何度も何度も書きました。3年かけてのプロジェクトだったので、3年後のゴールに加え、直近1年も書きました。何回書いても、もう一度書きましょうと言われ、いつまで続くのだろうと思っていました(笑)。なぜ、誰が欲しいのか、それができると誰が嬉しいのか、をずっと噛み砕いていって、そのゴールを置くという作業をやったことがなかったので、今もまだ慣れません(笑)。
中野
ゴールのコミュニケーションという意味では、最初はどうしてもシステムを作ることが目的化してしまいがちです。その意味で、誰にどういう価値を届けるか、そのプロジェクトのロードマップを事業の戦略と合わせてどう刻んでいくのかを考えてほしいと思って、そういう話をずっとしていました。事業の戦略と紐づけて考えるようになるとトータルで会社の貢献に直結するので、成果が出しやすいと思います。
天野
締切を決めて、要件定義をして、これを作りましょうという話よりも、組織の戦略を実現するために、ソフトウェアとしてはこんな貢献の仕方ができるというものがプロダクトゴールになって、それを実現することで、組織の競争力にもなっていくのが理想的だと思います。アジャイル開発はゴールありきだと私も思うので、ゴールを設定して実現するためのコミュニケーションを、本当にしつこくやらせていただきました。
高橋
私はシステム開発自体が未経験でしたので、開発メンバーが話している用語がそもそもわからないところから入りました。かみ砕いて伝えているつもりでも全然伝わっていなくて、1週間が終わって出来上がったものが思っていたものと全然違うこともありました。でも、こうした経験を通じて、お互い同じ言語を使っているのに、こんなに頑張らないと伝わらない、でも伝わったら急に回り始めるということを学びました。
また、開発が進まず、エンジニアの方たちが苦しんでいるときに何もしてあげられないっていうのはつらかったですね。状況が変わるきっかけの一つは、途中で着任したリーダーの「こういう設計はどうでしょう」と口火を切って提案してくれるスタイルが合っていたのか、その発言を拾うメンバーにまた違いが生まれ、会話が回り始めると、これがわからない、こうした方がいい、と言った発言が出てきて動き始めた気がします。今はチームが安定して、2ヶ月前から比べると3倍から5倍ぐらいのスピードで進んでいて、プロダクトバックログアイテムを用意するPOの仕事が追いつかなくなっているくらいです(笑)。
実は社内からはウォーターフォール型で外に依頼して開発した方がいいのではという話は何度も出ました。ただコーチ達も庄田さんも我慢のしどころだという話だったので、もう1か月だけと言って、耐えに耐えて延ばしてきました。続けることができたのは、アジャイル開発でやろうと言い出した役員の三宅の意志が強かったことが大きいと思います。私自身は正直ちょっと迷いました(笑)。三宅はアジャイルでないと意味がないと最後まで言っていました。
アジャイルコーチのいる開発といない開発を比べた時にどんな違いを感じましたか。また、アジャイルコーチのサポートのうち記憶に残るものがあれば教えてください。
庄田
自分はSMとしてやり始めてはいましたが、きちんとSMがいる現場でやったことはなかったので、どういう活動をするのが良いのか悪いのか、自分の中で試行錯誤ができていませんでした。アジャイルコーチがいる中で、うまくいってないところがあればフォローしてもらえたり、迷ったときに相談に乗ってもらったり、自分がファシリをした後の面談で、よかったことや改善点をいろいろ話し合うことができたので、いろんな経験ができました。
天野
そうですよね。何かを一緒にやって、その反省会を毎回やって、こんな解釈もあるとか、次はこういうことを試してみましょうか、というのを毎週やりましたね。
庄田
よりアジリティ高く何かをするっていうところの感覚や、変な方向に行っている時にちょっと違うのではないかというフィードバックをもらった部分はかなり強力でした。どうしても今まで通りのやり方や、自分達が楽な方向に流れがちのところを矯正してもらえました。他の現場では、スクラムと言いながら、 ウォーターフォールのくずれた形でなぜかうまくいかないとか、POが言ったことを全部やらないといけないと、ずっと残業するというところもありましたが、そういうことは一切なかったです。
今後どんなところに取り組んでいきたいかお聞かせください。
高橋
システム開発に関して言うと、1年目がもうすぐ終わろうとしていて、その次2年目3年目となっていきますが、ここからは他社が持っていないものを先駆けてやっていく段階になります。よって、こういうものが欲しいと開発チームに伝える際に当社の目指すところを今まで以上に伝えていく必要があると思います。弊社が社会に対してリーダーとしてどんなことをやっていきたいのかを伝え、それを一つずつ積み上げていくと、使う人に何が渡されるのかは、楽しみにしていてもらいたいなと思います。
庄田
今のプロジェクトで言えば、今後新しいところを作る段階に入って、何が正しいのかがわからないことが増えると思います。だからこそ、きちんと仮説を立てて、どうやったら検証できるかまで、みんなで考えて、検証しながら必要なものをしっかりと作っていき、アジャイルの良さを売り出せるような活動をしていきたいなと思っています。メンバーズエッジとしては、今回のようなプロダクトを他の会社向けにもどんどん作りたいという方針があるので、SMを社内でもう少し育てて、いろんなところに影響を出せるように貢献したいと思っています。また、今回アジャイルコーチに入ってもらって、今までやってきたやり方だけでは難しくて、どうすればより良くなるかを、社内でも話すきっかけになりました。今後どうしていくかを上の方で話し合っていて、中野さんにもその話し合いに入ってもらっているので、今回のことはいいきっかけになったように思います。
中野
メンバーズエッジさんの中でも、メンバーズエッジが今後に向けてどうしていくのか、達成したいミッションビジョンは自分達としては具体的にどういうことかを議論してより腹落ちしていただくようなワークショップをして頂こうとしています。アジャイルを中核においているので、よりパワフルなアジャイルチームがたくさん生まれたらいいなと思っています。
これからアジャイル開発をやる方へのメッセージをお願いします。
庄田
POとどれだけコミュニケーションを取って、スプリントごとに自分たちがどこまでできるか、あとプラスでここまでという目標値を設定できるか。POが安心して今後の予定を立てやすいような形にしていけるように、まずは1週間ごとにきちんとモノを作っていくことを意識するとスクラムとしてうまくいきやすいと思います。
高橋
最初3か月は開発が進みません(笑)。でも、その後が良いので、最初3か月我慢ができるならぜひやるべきだと伝えます。外部からは何ができたと聞かれますが、チームワークを作っているところなのでモノはできていない、と。チームの目線を揃えて、認識合わせをして、なんなら世間話をして人となりを知って。いいプロダクトはそんなところからできているということをわかってもらえるとよいと思います。
天野
我々コーチもその部分の説明には普段苦労している側です。プロダクトとチームが表裏一体で、同じものという認識をしているところがありますが、良いチームを作って、その良いチームが良い活動するとプロダクトができてくるという関係だと思っているので、そこは切り離せないと思います。チームとして学習して加速もしてくると、コミュニケーションのコストもどんどん下がる、その効果も今すごく感じていらっしゃるようですね。
伊藤
今まではシステムチームがシステム開発をやっていて、事業側とやや断絶していた感じがあったのですが、今回高橋さんにPOで入ってもらって一緒のチームでやることで、事業側にも何に時間がかかるなども理解してもらえるようになりました。今後新しいものを開発するにしてもコミュニケーションが取りやすくなるなどの良さがあると思います。
最後に、アジャイルコーチの支援を受ける上でお勧めするポイントはありますか。
高橋
経営者層の方たち向けに、他の企業との比較など広い視点で話してもらうことをお勧めします。実際に手を動かす人達が得られるものもたくさんありますが、どちらかというと、コーチに頂いた情報やピンポイントのアドバイスを上層部が聞いて、他の企業ではどういう動きをするのか、こうするとこんな結果になる、などを吸収しやすいのではないかと思いました。
庄田
私の方は、SMが会社に揃っていない状況で、これからアジャイルやスクラムをやっていくという時には、積極的にアジャイルコーチにお願いして、土台を作る部分にいろんな考え方をインプットしていただくことをお勧めします。
天野
コーチも人によってキャラクターや強み特性が大きく異なりますので、中野さんは特性に合わせたマッチングに注力していると思います。よく知らないコーチに頼んで、全然合わなくて、途中で契約終了なんていう話も他では聞きますから(苦笑)。逆に、今回のアジャイルコーチの関わり方や体験が良いものだったのであれば、これを一つ成功事例に、他のコーチを検討するための材料として相談してもらうといった使い方をしていただくのも良いかと思いました。
中野
今後のセカンドオピニオンも含めて、ぜひご利用ください(笑)。スクラムはシステム開発だけでなく、いろんな分野に適用できるので、オールバックスだけでなく、営業などへ広がっていくと、会社全体でさらにスピード感と競争力を増すきっかけになると思います。私、以前は広報部門のチームにスクラムの支援をしていたこともありますし、その意味でも、いろんな場面でスクラムを使っていただけると思います。
天野
開発で成功体験が積めると、他の部署に波及するケースもあるので、会社全体がアジャイルな方向に行ったりすると、我々としてはすごく嬉しいですね。本日はありがとうございました。
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